サーバントリーダーシップ

人を活かすサーバント・リーダーシップの力 Vol.7 サーバントリーダーになるには

■本質的なリーダーシップ

私は、サーバント・リーダーシップは特殊なリーダーシップではなく、
リーダーシップの王道であり、本質的なリーダーシップだと思っています。
しかし、それならば、なぜわざわざサーバント・リーダーシップという言葉を持ちだす必要があるのでしょうか。
今回は、通常のリーダーシップとサーバント・リーダーシップの違い、
そしてサーバント・リーダーシップの身につけ方について考えてみたいと思います。
サーバント・リーダーシップの特徴や条件はさまざまに説明できますが、私はシンプルに次のように考えています。

 ◆サーバント・リーダーシップの2大条件◆
  1.「大義のある理念や目的(ミッション、ビジョン、コアバリュー)を示す」
  2.「理念を遂行してくれるメンバーを支持して力を引き出す」

■大義のあるビジョン
リーダーシップにおいては、ビジョンを示すことが大切です。ところが、多くのリーダーはビジョンを示していません。
たとえば企業の中間管理職であれば、特段にビジョンを示さなくても、仕事はできます。
なぜなら、上から降りてくる目標があるからです。
この目標をどうやって達成するかを考えて、マネジメントさえしっかりすれば、目標は達成することができます。
しかしそれは結果的に、自分はリーダーでありながら
「言われた仕事」「決められた仕事」にしか取り組まないということになってしまいます。
「自分がいい思いをしたい」「自分の有能さを証明したい」「自分が賞賛されたい」
こういったエゴに基づくビジョンや方針でも、上司という立場の権限で人を動かすことはできます。
メンバーは義務だから動いてくれるのです。サーバントリーダーが示すビジョンには大義が必要です。
大きく言えば、「世の中をこうしたい」「本来、世の中はこうあるべきだ」……
 もう少し現実的な観点であれば、「ウチの会社をこうしたい」「本来、ウチの会社はこうあるべきだ」
「自分たちのチームをこうしたい」「本来、自分たちのチームはこうあるべきだ」……
もっと直近のことで言えば、「いい仕事でお客様に貢献したい」「みんなに成長してほしい」「みんなに仕事の面白さを味わってほしい」……
サーバントリーダーにはこういったエゴを超えた目的(大義のあるビジョンやミッション)が必要なのです。

■部下の力を引き出すサーバントリーダー
どんなに素晴らしいビジョンを示しても、メンバーがそれに懸命に取り組んでくれなければ、目的を達成することができません。
ですから、サーバントリーダーは理念や目的(ミッション、ビジョン、コアバリュー)を
遂行してくれるメンバーが力を発揮できるように、彼らを支援し、彼らに奉仕します。
ところが、一般的なリーダーシップ論では、なぜかここにあまり着目しません。
まるで、素晴らしいビジョンさえできれば、あとは勝手にメンバーが動いてくれるような印象を受けます。
命令すれば人は動くと勘違いしているのかもしれません。残念ながら、人はそんなに単純な存在ではありません。
もちろん、企業で上司が命令し、部下が目標に取り組まないということは、
「退職します」と意思表示するようなもので、そのような行動は取らないでしょう。
しかし、情熱を持ってそれに取り組むかどうかは別です。

人はリーダーとどのような関わりを持てたときに、そのビジョンに全力を尽くすのでしょうか。
司馬遷の『史記・刺客伝』に次のような言葉が出てきます。「士は己を知る者のために死す」。
これは、「人は、自分を理解してくれる人のためには命までも差し出す」という意味です。
人は、自分を理解し、自分を愛してくれるリーダーに対しては、命を投げ出すことさえあるのです。
すべての人はみな同じ優先順位を持っているのではなく、
人それぞれに自分の優先順位があり、それがゆえに、「命をかけて何かを実現する」ということも起こるのです。

少し極端な話になりましたが、企業などの組織においても、人は認められたり、支援を受けて、
自分が人として大切に扱われていると感じると、本気になるのです。

■本当の自分を知る
では、サーバント・リーダーシップを身につけるには、どうすればよいのでしょうか。それには、「自分を知る」ことが必要です。
「自分を知る」とは、「自分は何者か?」「自分はどういう人なのか?」「自分は何を生み出す人か?」「自分は何を大切にする人か?」
つまり、本当の自分の軸を知ることです。もし、この軸が定まっていなかったら、
あるいは「自分がいい思いをしたい」「自分の有能さを証明したい」「自分が賞賛されたい」というエゴに満ちた自分だったら、
理念を示すことも、メンバーの力を引き出すこともできません。
『出現する未来』(ピーター・センゲ/講談社)の中にこんな詩があります。

 木が種からできるのは常識だ。
 だが、どうやって一粒の小さな種が巨木になるのだろう。
 種は木が育つのに必要な資源を持っていない。
 資源は木が育つ場所の周囲――環境にある。
 だが、種は決定的なものを提供する。木が形成され始める「場」である。
 水や栄養素を取り入れながら、種は生長を生み出すプロセスを組織化する。
 ある意味で、種は、生きた木が出現する未来の可能性の入り口なのだ。

私たち一人ひとりは、種なのです。私たちが成長するときに、自分の中に全てがあるわけでは決してありません。
周囲からさまざまなものをいただいて成長していくのです。自分一人の力では成長できないのです。
ところで、私たちは何の種なのでしょうか。それは「自分の使命」という種です。
サーバントリーダーになるには、この「自分の使命」を問い続けることが必要不可欠なのです。

 

 

更新日: 2012年 10月 05日

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