サーバントリーダーシップ

人を活かすサーバント・リーダーシップの力 vol.8 業界全体の発展に尽力するマテックス

窓ガラスやサッシの卸事業を主体に、 快適な住まい作りを提案するマテックス。
業界的には非常に厳しい状況下にあっても高い業績を出しているのはなぜなのか。
松本社長のリーダーシップのあり方にその秘訣を探ってみたい。

マテックス株式会社代表取締役社長 松本 浩志 氏  

■昭和3年創業のマテックス

── 松本さんは現在39歳、3代目の社長となって4年目ということですが、   最初に、事業内容や業績について
簡単にお話しいただけますか。

松本 マテックスは防災・防犯対策、省エネなどさまざまな機能を備える 「窓ガラス」「サッシ」を
主体にした快適な住まい作りを提案する卸事業を 展開しています。この5月で創業84周年を迎えました。

──  どのような経緯で今の仕事に就くようになったのですか。

松本 アメリカで経営学を専攻し、ビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得しました。
卒業後は電気メーカーに入社し、その後、父の後を引き継ぐことになりました。

── 3代目となる戸惑いや葛藤などはありませんでしたか。

松本 リーマンショックの直後ということもあり、不安が相当ありました。
業界全体の売り上げは20~40%減でしたが、私どもは2.数%の減ですみ、その後は 増収増益になりました。

── すごいですね。

■時代が変わっても、変えてはいけないものがある

── 3代目として、どんなことを心がけたのですか。

松本 この80年間を振り返り、先輩社員やOBなど、いろいろな方に話を聞き、 父が会議などで
口にしていたことを洗い出し、自問自答し、今まで培われてきた 目に見えない大切なものを経営理念として
明文化しました。たどり着いたのは次の5つです。

一、窓をつうじて社会に貢献する
一、「卸の精神」を貫く
一、信用を重んじ誠実に行動する
一、浮利を追わず堅実を旨とする
一、人間尊重を基本とする

時代が変わっても、絶対に変えてはいけないものがあると思うんです。 中抜き、卸し不要の時代といわれ、
今、いろいろな業界で直販が行われていますが、 私どもが扱っている窓ガラスやサッシは建物によって
みな寸法や種類が違い、 現場に納めて初めて完成した商品として認められるものなので、
直販は危ないシステムだと思っています。

── 3代目の社長に就任するとき、古参の社員からの反発はありませんでしたか。

松本 先代に仕えていた年輩の社員を辞めさせるのではなく、思いっきり能力を発揮していただくために、
営業の総責任者や経営企画の部長に任命しました。

── 普通に考えれば、あえて難しいことをしているというように映りますが……。

松本 こういったかたちで能力を発揮してもらうのは私としてもうれしいですし、 そのような先輩方が
認めてくれなければ、きちんとした代替わりはできないと思ったからです。 最初にマテックスに来たときは、
冷ややかな目で見られました。 でも、時間をかけながら、今後、自分がどんなことをやりたいのか
ということに ついて会話を繰り返し、一人ひとりとかかわることで信頼を得、3代目社長の就任の日に、
皆さんが今までやってきたことに敬意を表して理念を明文化したことを話しました。
ですから、すごく協力的になってくれました。

■大切にしたい地域の担い手への支援

松本 景気がいいときには、たくさんの商品を卸し、売ることだけを考えていました。
でも、今は全く違う時代になりました。最近、私は、スケール(物差し)を 変えなければと
思うようになりました。これからは、中長期的な感覚で物事を考えないと、 場当たり的になってしまいます。
自分が生きている間にできることを成し遂げて 次の世代につないでいく。お客様が本当に望んでいることを
知らなければ、 単なる物売りとして片づけられてしまいます。

── その一つが、地域の担い手(ガラス店、施工者)への支援なんですね。

松本 昔は同業者同士のつながりがありましたが、今はどうやって生き残るかで 頭がいっぱいなんです。
今後はみんなでネットワークを築いて、何かあったときに 相談しあうことも必要です。
これからは業界の枠組みの中だけのつながりではなく、 異業種の方々ともっと交わり、学ぶ必要があるのでは
と考えています。 息子には仕事を継がせたくないという年輩の社長さんには、若い経営者が集まって
学び合っていることを伝えると、それは心強いねと言ってくださり、2件ほど、 考えを変えてくださいました。

── いい話ですね。

松本 窓業界の長期的な展望を考え、ガラス屋さんの子どもたちに、お父さんが 現場で何をしているのかを
伝えていければということで、毎年10月に展示会をしています。 子どもたちは、作業着を着て
1日中格闘しているお父さんの姿を見ています。 しかし、扱っている商品がどれほどすごいものであるかなどは、
きちんと 伝えていないと思います。ここでは、作業着ではない普段の休みの日のお父さんの姿で、
スーツを着た仕入れ先の営業マンたちとの関係も見ることができ、お父さんの仕事を 見直す機会になっています。  

あと、学生と企業のシンポジウムもやっています。 就職活動の中で、大きな企業の華やかさだけに
目が行くのではなく、働きがいのある 中小企業も一つの選択肢としてとらえてほしいと思っています。

私どもは、ガラス窓やサッシの性能を高めて熱のロスを抑える「エコ窓」の普及活動を しています。
街のガラス屋さんと共同して2009年に「エコ窓普及促進会」という会を設立し、 地域で開催される
環境展やエコフェア、小学校で行われる環境教育などに参加して、 一人でも多くの方に窓の問題について
伝えたいと思ってスタートしました。

■ 共存・共栄の豊かなる森へ

 ── どうしてこのような取り組みを始めるようになったのですか。

松本 私が電気メーカーに勤めていたときに原体験があります。当時、東北で一生懸命に
物作りをしていました。真面目なお父さんやお母さんが工場で、10円のコストダウンを どうすれば
できるのかとか、100円下げるにはどうしたらいいのかとかを一緒に考えて くれたのです。
そうやってコストダウンができたものを、一方で、3000円下げろ、5000円下げろといった 競争が
繰り返されていたのです。  

この競争ってどうなのかという疑問を、 あのとき、ものすごく感じました。こんなにみんなが生き急ぎ、
身をすり減らしながら競争して、 本当にずっと持つのだろうかということを考えさせられました。
今の電気メーカーが どんな姿になっているのかはおわかりですよね。  

その後、今の業界に転職して思ったのが、安値競争に巻き込まれて身を すり減らしているという強烈な印象でした。
そんな競争はいつまでも続くものではない。 途中で誰かが脱落して倒産という構図になっています。
こういった競争の流れというのは、 一気に変えられませんからね。こんな競争は本来の我々が目ざすもの
ではないということを、1人でも多くの人にわかってほしいと思って、いろいろな取り組みを始めたのです。  

1本の巨木を育てようと思って水をやり、肥料を与えても、1本だけではすごく弱いと思うんです。
1本の巨木だけを養うのではなく、それぞれの木が共存・共栄していけば、 森全体が豊かになっていくはずです。
生態系は自然界のものだけではなく、 産業界をはじめ、社会の中にも目には見えない生態系があるのではないかと
思っています。自分だけよければという思いは、生態系を破壊していきます。

── 大義のある理念を示し、自分たちだけの利益ではなく、社会や地域、業界などに 奉仕していく松本社長は、
まさにサーバント・リーダーシップを体現しておられるのでは ないかと思っています。
今日はお忙しいところ、ありがとうございました。

 

 

更新日: 2012年 11月 29日

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