サーバントリーダーシップ

人を活かすサーバント・リーダーシップの力 vol.9 全社員からの熱いメッセージ

一般的に、守りが中心であまり表舞台には立たないといわれるビル管理会社。 それが島津氏の就任によって、
4年間で業績も好調に推移、従業員も元気で明るく楽しい社風に生まれ変わった。
島津氏はいったいどんなリーダーシップを発揮したのだろうか。

株式会社シマーズ代表取締役社長 島津 清彦 氏
(前スターツファシリティサービス株式会社 代表取締役社長)

 

■初めて目にした管理室に衝撃

── 島津さんはこの春に独立して創業されましたが、それまでさまざまな業種・職種に携わり、大きな成果を
挙げてこられました。今日は、5年程前に立て直されたビル管理会社の話を中心にお聞きしたいと思っています。

島津 私が副社長として就任した(その1年半後に社長)のは、当時48年の歴史がある老舗のビル管理会社でした。
就任当時は約660件の物件があり、従業員も600名程だったと思います。

── 会社の第一印象はどんな感じでしたか?

島津 私がそれまで関わった会社と比べ、社員の平均年齢も高く、これは当然でしょうが、新しい体制への
不安感や防衛反応などを感じました。

── どのようなことから着手されたのですか?

島津 まずはすべての営業所、事業所を回って、現場の状況を観察しました。築年数がとても古く、
光の入らない地下室で事務仕事をするというのが当たり前の世界で、明るいオフィスにすっかり慣れた私には、
その環境はとても衝撃的でした。それまでの私が恵まれすぎていたのでしょう。  

そこで、管理室を移転することはできないが、せめて周りの環境だけは改善していこうと思いました。
まずは社員の意見・要望を吸い上げ、ユニフォームを軽くて動きやすいものにしました。  

次にしたのが自己開示です。私という人物を理解してもらうために、失敗談を含めたプロフィールを、
A4の紙一枚にまとめ、全事業所に配りました。あまりにも私がオープンにさらけ出したので、皆驚いていたようです。  

さらに、私が何を考え、これからどうしようとしているのかを、ブログ形式でほぼ毎日全社員に発信し続けました。
それと、若手の抜擢と併せ、社員に経営参画意識を持ってもらうため「風土改革委員会」を立ち上げました。
これは、年齢、性別、職種をバラバラにして10名ほど人選し、会社の課題を明確にさせ、6か月で答えを
出そうというプロジェクトです。この委員会は会社の意思決定に大いに貢献してくれました。

 

■大切な心と心のコミュニケーション

── その他、どんなことをされたのですか?

島津 社員との距離を縮めようと思いました。
たとえば、「社長とのダイレクトコミュニケーション」という名前のQ&A方式のディスカッションに
食事会をセットしたものをほぼすべての部門・社員とやりました。事前に私への質問を紙に書いて提出してもらい、
私が一つひとつ答えていきました。これが、会社の心を整えていく一つのプロセスになったと思います。  

社員の家族にも心を配りました。夏休みに希望する社員の子どもたちを会社に招待し、この近くには、
お父さんやお母さんが働いたり管理しているビルがいっぱいあるよと言って、スタンプラリーを実施しました。  
終わったあとは、社員証を真似て作ったものを参加した子どもたちの名前でプリントし、プレゼントしました。
そうすると、翌朝から、親を見る目が変わったそうです。明らかに尊敬の眼差しに……。  
コミュニケーションを通じて社員との信頼関係構築には特に力を注ぎました。

── 仕事そのものは大きく変わりましたか?

島津 「ビルを毎日守っている自分たちこそが最高の改修提案ができる」という意識で改修工事部門を
強化しました。管理という守りの仕事だけではなく、攻めもなければという意識です。
成功事例が報告されるにつれ、意識も、モチベーションも上がってきました。

 

■「すべては島津社長と共に」

── ビル管理会社の経営者となって奮闘した4年3か月。その後、別の会社に転任することになりましたね。

島津 もちろんまだまだやり残した感はありましたが、これは組織人としては当然の役割です。
それから2、3か月後、そのビル管理会社の社員が私の新しい会社を訪ねて来て、
「実は、これをみんなで作りました」と言って、小さな手作りの本をプレゼントしてくれたのです。
「すべては島津社長と共に」という書名は、先のビル管理会社の風土改革委員会で企業理念をみんなで
作り直したときの、「いつも建物のそばに、いつも人のそばに、すべてはお客様と共に」をもじったものです。  

本の最後に、「あの頃、僕らはまだ何もわからずに、ビルを管理していたんだ」と小さく書いてありました。
ここには思い出の写真とともに、まえがきに、このように書いてありました。
「島津さん、2007年4月から4年3か月間、お疲れさまでした。島津さんの温かく、厳しく、おもしろい
メリハリのついた手腕で、この会社は風通しのよい活気のあるすばらしい会社になりました。
感謝の思いを込め、全社員からの熱いメッセージを本にさせていただきました。しかしながら、
みんなの思いが熱すぎて、広辞苑のように厚くなりそうだったので、一人20文字以内でメッセージを
まとめさせていただきました。今後もいっそうご手腕を発揮なさるように願っています。社員一同」

── 最初にこの本を見たとき、どのように感じられましたか?

島津 自宅で一人で読みながら涙がこぼれました。絶対棺桶に入れるぞ(笑)と思いました。これは私の一生の宝物です。

 

■私のミッション

── 最後に、島津さんのリーダーシップの特徴を教えていただきたいのですが……。

島津 そのようなものは特にないのですが、私自身のミッションは手帳に書いて、いつも読み返しています。
「私の人生の目的は、出会う人すべてに、明るさ、楽しさ、元気を与え、いやし、勇気を与えること。
悩みから解放し、聞いてあげること。笑顔と涙が出るほどの感動を与えること」  

これは、2007年に、私自身が大きな壁にぶつかって挫折、ノイローゼ気味になった時に、
その状況から脱した瞬間に手帳に書いたものです。精神的に追い込まれた状況を何とか打開しようと、
哲学や宗教、人生論、宇宙の仕組みなどに関する本を読みあさり、毎朝自転車で海岸まで日の出を見に行きました。

それから1か月半程したとき、不思議なくらいにスッと治ってしまったんです。
今まで自分がいかに思い上がっていたか。感謝があって初めて人は動くんだと悟りました。

── その経験が今に生きているんですね。今日は、リーダーとしての大事な視点をありがとうございました。

島津 こちらこそ本当にありがとうございました。

 

 

更新日: 2012年 12月 03日

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