真田コラム

想像力をコントロールする(6月2日ニュースレター掲載分)

私は今、日本を代表する劇作家で演出家である平田オリザ氏に演劇を学んでいます。
もちろん俳優になろうと思っている訳ではなく、演劇を題材に
コミュニケーションを研究しているのです。

平田氏によると、テレビなどの大衆芸術とマニアックな舞台芸術の大きな違いの1つは、
観客の「想像力のコントロール」の違いだそうです。
大衆芸術では相手の理解力が様々なので、誰でもわかるように
全てを説明する表現を採ります。
そのお蔭で誰が見ても理解することができます。

しかし、ドラマや劇をある程度精通している人にしてみれば、
全てが規定されている表現では、自分の想像力の発揮が出来ないので、
退屈なものになるのです。

舞台芸術では、表現することを控え目にして、観客が自由に想像力を
働かせて楽しめるように、意図的に空白を作るのです。
例えば、セリフとセリフの間を長く取ることで、観客はこの後に起きることを予想したり、
登場人物の過去の関係などについて考えることができます。

しかし、これも程度問題です。観客の想像力は無限ではないので、
ある程度こちらで表現をしていかないと、観客は退屈になります。
もし、観客の想像力が無限であれば、舞台上にリンゴを1個置いておけば、
観客は自由に笑ったり泣いたりするかもしれませんが、そんな事は実際にはないでしょう。
つまり、観客の想像力のレベルを想定して、それに応じて
コントロールすることが必要なのです。

この話は部下指導にも共通しています。新人には業務のほとんどを
上司が決定し指示することが必要でしょうが、ある程度仕事が分かっている
中堅社員にそんな指示をすれば、部下は業務における想像力を発揮することができず、
たちまち退屈になってしまいます。

かといって、全てを部下に丸投げをしては、部下の想像力の範疇を超えてしまい、
何をやったらいいか分からないため、こちらも退屈になってしまいます。

部下指導においても、「想像力のコントロール」が必要なのです。

更新日: 2011年 06月 21日

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