真田コラム

松井はどうしてヤンキースタジアムを総立ちにさせたのか?(8月22日ニュースレター掲載分)

先日のニューズウィーク日本版にこんなタイトルの記事が掲載されました。
ヤンキースは松井とわざわざ一日だけの契約を交わし、
ヤンキースタジアムで感動的な「引退セレモニー」を行いました。
ファンや松井自身だけでなく、キャッシュマンGMを始めとする経営陣まで感傷的になっていたのが印象的でした。

ヤンキースは、そこまで松井を愛していながら、どうして2009年のシーズンオフ、
あのワールド・シリーズMVPの大活躍をした直後に、松井氏を放出したのでしょうか。
またファンもそれを認めたのでしょうか?
ヤンキースは、なぜ一旦放出しておきながら、
4球団を渡り歩き、他球団で引退した松井をわざわざヤンキースの一員としての引退式を行い、
彼の功績を讃えたのでしょうか?また、ファンもそれを熱烈に支持したのでしょうか。

ここで見えてくることは、「ビジネスの合理的判断」と「人間としての思い」の明確な区別です。
チームの若返り構想や、総人件費の抑制という中で、
松井の放出は「ビジネスの合理的な判断」として野球ファンも納得したのでしょう。
一方、球団関係者やファンの松井に対するリスペクトや愛情といった、
「人間としての思い」は松井がチームを何度移ろうと変わらなかったのです。
「ビジネスの合理的判断」と「人間としての思い」を明確に区別する。
この感覚が分からないと、あのセレモニーの感動は理解できないでしょう。

これからの時代のリーダーは「人間としての思い」として、
メンバーや他人を「人として尊重する」そういった心を持つことが必要です。
上下関係や、年齢、性別とは関係なく、「人としての尊重」です。
それがなければ、ダイバーシティなど実現できません。
しかし、間違えてはいけないことは、「人としての尊重」が必要だからといって、
「ビジネスの合理的判断」が必要ないということでは、決してありません。
両方、必要なのです。

たとえば、球団がある選手を「人として尊重」しているからといって、
合理的判断による起用を放棄したら、
その球団は勝つことも、ファンを魅了することもできないでしょう。
これは球団の存在意義の否定です。

企業においても、「人として尊重」しているからといって、
仕事が十分にできていない人にマイナスのフィードバックもせずに
放任することは、「ビジネスの合理的判断」を欠いています。
これでは、顧客に迷惑をかけることになり、ミッション・ビジョンの放棄につながります。

ですから「人として尊重」はしていても、時には厳しいフィードバックが必要です。
でも、成果が出てないからといって、「人しての尊重」を捨てる言い訳にはなりません。
「人としての尊重」と「ビジネスの合理的判断」。
リーダーには両方が必要なのです。
 

更新日: 2013年 08月 23日

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