真田コラム

下手くそ力(2014年6月10日ニュースレター掲載分)

実は私はコミュニケーション能力に全く欠けていました。
新入社員で営業に配属された時、お客さんと雑談さえできませんでした。
ましてや、人前で話すなんてあり得ないと思っていました。
不思議なもので、それが気がついたら人前で話す仕事をしていました。
大企業の幹部を集めてのセミナー、役員会での講話、皇居内での講演、
最高裁判所が設置する司法研修所で裁判官向けの講座、
様々な場所で話す機会を頂いています。
何故話せるようになったのか、自分でも不思議に思います。

もし理由があるとしたら、下手くそ力です。
下手くそは、下手くそのやり方を追求すべきなのです。
雑談さえ出来なかった私は、相手が雑談を切り出してくれるようにしました。
営業に行く時に、相手が話し出したくなるような題材を持って行ったのです。
ネットの無い時代ですから、新聞や雑誌の切り抜きです。
それを差し出してこう切り出すのです。
「ご存じだとは思うのですが、参考までにお持ちしました。どう思われますか?」
あとは、相手が感想や自分の考えを話してくれます。
私はそれを、特別に熱心に聴くだけです。
大きくうなずき、あいづちを打ち、一生懸命メモを取ります。
そして相手が言った面白い話には、大きな声をあげて全力で笑うようにしました。
すると、不思議なことに多くのお客さんは
「今日はいい話を聞かせてもらった。またおいでよ」そう言ってくれたのです。

下手くそな私は、気の利いたことも言えません。とっさの機転も効きません。
非常に不格好なやり方でしかコミュニケーションが取れなかったのです。
しかし、下手くそには格好を構っている余裕はありません。
しかし、幸いなことにビジネスは結果を出すことが大事であり、
格好がいいかどうかは関係ないのです。

実は下手くそには利点もあります。
自然体で出来ないということは、やり方を研究することになるのです。
たとえば、相手が気持ちよく話すということは、
「二人の間にどういう作用が起きているのか」
そのメカニズムを研究するようになりました。
法則化できると応用も出来ますし、人に伝えることも出来ます。
スポーツの世界で名選手では無かった人が、
名コーチになることが多いのも同じ理由でしょう。

あなたが才能溢れた人であれば、今回の内容はお役に立たないでしょう。
でも、もし下手くそ力が必要なら、参考にして下さい。

更新日: 2014年 06月 12日

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