L.E.T. (Leader Effectiveness Training)の専門家 辻 達諭氏と弊社真田との対談
L.E.T. (Leader Effectiveness Training)の専門家辻 達諭(つじ ...
大澤 千恵
トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社
コーポレートHR(スイス本社) 平塚俊治氏インタビュー
ポストコロナ時代に求められる「“変革をリードするHR”」
付加価値を高め、進化するために必要なことは?
コーポレートHR(スイス本社)
グローバルプロジェクトリード
オーガニゼーションデベロップメント
元 取締役人事本部長 グローバルHRビジネスパートナー
東京都出身。一橋大学商学部を卒業後、NECに入社。約20年に渡り本社および国外のグループ会社等で人事分野の職務を担った。 2004年、マスターフーズリミテッド(現マース ジャパン)へ転職すると、マネジメントチームメンバーとして、人事領域とともに経 営変革の担い手として約7年間従事。そして2011年にトリンプ・インターナショナル・ジャパンの取締役人事本部長に就任し、 Global HR Business Partnerとして、約10年間、経営と構造改革に携わる。2021年4月、コーポレートHR(スイス本社)に直接レポ ートするGlobal Project Lead, Organization Developmentに就任し、新たな役割を担う。
※部署・役職はインタビュー当時のものです
真田:HR業界のプロフェッショナルとして、グローバルに活躍しておられる平塚さんに、色々とお話を伺います。最初にお声掛けをした時に、私の本を読んでくださったことがあるそうで、ちょっと驚きました。
平塚:『サーバントリーダシップ実践講座』です。大変参考になりました。社内のリーダーシップトレーニングで活用させていただきました。
真田:ありがとうございます。光栄です。
真田:まず、現在に至るまでのキャリアについて教えていただきたいのですが。
平塚:今まで、3社ほど経験しております。最初は新卒でNECに入社しまして、そこで約20年間キャリアを積みました。
初任配属の工場労務から始まり、米国ビジネススクール留学を経て国際人事に異動、当時はまだ珍しかった外国籍社員の採用をやっていました。
その後、米国の基礎研究所に出向、初めて持ったチームが全員外国人で悪戦苦闘しました。
復帰後は本社国際人事で制度企画やオペレーション、買収企業など海外法人ガバナンスなどに従事しました。
領域は幾度も変わりましたが、基本的に一貫してHRのキャリアです。
国際人事の仕事では、グローバル企業のHRをベンチマークすることが多く、自分もそのような環境で将来チャレンジしたいという希望を持ち始めました。
そのような折、縁あって、マースジャパン(当時マスターフーズリミテッド)に外国人HRディレクターの後任候補として転職しました。
入社翌年に大きな構造改革があり、洗礼でも受けたように感じながら何とか乗り切った後で、HRディレクターとしてマネジメントチームに入りました。
以降ビジネスパートナーとしてのHRというものをマインドセットから学びました。
入社当初の衝撃は大きく、別の惑星に来たかのような感覚でした。
企業文化浸透へのトップのコミットメント、コーポレート本社の巧みなグループガバナンス、意思決定や行動のスピード、手厚い人材投資、評価プロセスの実行の質、どれをとっても刺激的でした。忘れられないのは英語です。
オーストラリア、スコットランド訛りの英語が飛び交う会議でついていけず、本当にこの先どうしようかと思いました。
40代の遅めの転職で自分のキャリアにとって最大の転機でした。
50代初めに、トリンプインターナショナルから機会をいただき、2度目の転職をし、現在に至ります。
40代初めから始まったビジネスパートナーとしてのHRの怒涛の日々の経験がなければ、トリンプでのキャリアはありえなかったと思います。
真田:そのご経験を経て、今の会社に入られたわけですね。
平塚:はい、そうですね。グローバル企業2社で働いた経験を通じて、HRビジネスパートナーの仕事の本質のようなものを学んできました。
ビジネスパートナーとして果たすべき様々な役割の中で、自分のこれまでの経験においては、いわゆる変革エージェントとしての役割に常に大きな期待がかけられてきたと感じています。
真田:変革ですか。
平塚:組織も人も、あるべき姿を目指して変わっていこうとします。
そのような変革をリードし、サポートし、影響力を発揮していくことが、ビジネスパートナーには問われていると、マース時代のグローバル幹部から繰り返し言われ続けました。
ビジネスモデルも企業文化も異なるトリンプでも、同様に感じています。
真田:なるほど。
平塚:マースで自分が経験したビジネスパートナーとしてのHRは、将来どのような企業でも、当たり前のように求められていくだろうという予感がしたので、この分野を自分のキャリアの軸にしていこうと思っていました。
真田:トリンプさんにお入りになった経緯や、それからのご活躍について教えていただけますでしょうか。
平塚:お世話になろうと思った理由は、一言で言えば、様々な変革に取り組もうとするタイミングだったことです。
トリンプは135年前にドイツで創業し、現在はトリンプインターナショナルという社名でスイスに本社を置き、トリンプとスロギーというブランドで、世界120か国以上で事業展開しています。
真田:実は大変不勉強で申し訳ないですが、トリンプさんは日本の企業かと、勝手に錯覚をしておりました。
平塚:トリンプグループにとって、日本は規模的にも戦略的にも非常に重要なマーケットです。
日本では前回の東京オリンピックの頃から長年ビジネスをしてきており、天使のブラ、恋するブラ、スロギー ゼロ フィールなど、ヒット商品もたくさんあります。
市場でのブランド認知は非常に高いですが、おそらく外資というイメージは多くの消費者は持たれていないと思います。
真田:入社されて、実際はどのような状態だったのでしょうか。
平塚:私がお話をいただいた当時も、トリンプがグローバル企業としてのガバナンスを整え、ブランディング、商品開発、サプライチェーン、ITシステムなどを共有化、最適化し、グループの競争力をいっそう高めようとする時期でした。
私にとっては、製造小売業はもちろん初経験で、ガバナンスやグローバル企業としての発展の歴史も前職とはかなり異なっていたため、新しいチャレンジとしてとても興味を持ちました。
そういったビジネス全体としての文脈が、トリンプを選んだ第一の理由です。
平塚:ビジネスと同様にHRも変革期を迎えていました。
HRの仕組みも各国のユニットでそれぞれ構築してきた歴史がありました。
例えば、日本においても、等級制度、評価制度、昇給賞与などの主要な人事制度は、いわゆる伝統的な日本企業の仕組みでやっていたので、これらをグループ共通の枠組みに改革していくことが期待されていました。
HRチームもオペレーション効率は当時から非常に高かったですが、よりビジネスパートナーとしての貢献を高めていくことが期待されており、日本企業とグローバル企業で働いた自分の経験が活かせるのでは感じました。
真田:まさに、培って来られたご経験が求められますね。
変革を成し遂げて来られた平塚様だからこそ、お聞きしたいことがあります。日本企業とグローバル企業における、HRの役割の違いが相当あると感じます。
平塚:はい、そうですね。
真田:日本企業においても、HRはどうあればよいとお考えですか。
平塚:日本企業も大きく変わりつつあると思いますが、これからHRにいっそう問われることの一つは『付加価値の高いところにリソースをかける』という事だと感じています。
グローバル企業に転職して以来、いつも感じてきたことは、HRのビジネスへの貢献に対する期待が非常に明確なことです。
ビジネスサイドやグローバル本社からのモニタリングやフィードバックも厳しいので、付加価値の高いところに優先的にリソースを投じることができるように、HR自身も変わっていかなければならないという緊張感が常にあります。
真田:逆に言うと、付加価値の低いところに時間を使ってしまっているということでしょうか。
平塚:やるべきことが山ほどある中でより付加価値を提供していくためには、やはりビジネスの視点やHRサービスを受ける顧客側の目線で考えるしかないと思います。
ビジネス戦略とHRの優先事項との間の整合や、HRサービスの付加価値についてフィードバックを受け、そのインプットをもとにアクションをとっていくことが必要です。
当然権威や肩書で働くことはできないですし、ビジネスとの間の一種のサービス契約関係と捉えた方が良いと感じています。
真田:なるほど。HRの付加価値について、教えてください。
平塚:先程もお話しした通り、自分の経験においてそれが一番問われてきたのは、変革へのサポートや影響力だと思います。そこにHRがどれくらいコミットして貢献できるか、ビジネスパートナーとしてのHRの活躍に最も求められる点だと思います。
平塚:主要幹部とは定期的にワンオンワンを持ちます。キャッチアップと呼んだりします。
そこでは、組織や人の課題について相談されるだけでなく、HRからも積極的に課題提起します。
例えば、組織のリーダーシップを一段高いレベルにするためにどうするか、というようなテーマで話すとします。
その高いリーダーシップとは具体的にどういうことか、どのような行動や成果が見られれば望ましい姿に向かっていると言えるのか、いつまでに達成したいのか、というような対話をしながら、協働でゴールを一層明確にしていきます。そして次にゴールと現状の間にどのようなギャップがあるのか、どのようにそのギャップを埋めるのか、例えば、リーダーシップやコンピテンシーなど能力開発が必要なのか、社員エンゲージメントや組織開発的な施策が有効なのか、誰がキーパーソンなのか、何が制約になりそうかなど、そういったやりとりが出てきます。
そのように打ち手を相談しながら、HRとしてのサポートを明確化していくことになります。
その過程そのものが、HRがどう変わるべきかというインプットでもあります。
当然HRの現状のリソースでは直ちに対応できない場合もあるので、優先順位付けや時間軸などについて説明し、合意を得る責任があります。
真田:HRとしてどうサポートするのかを明確にし、自ら変わっていかなければいけないということですね。
平塚:ビジネスリーダーとそのような対話を繰り返しながら、ビジネス貢献に繋がるアクションをとっていくことが、HRビジネスパートナーが付加価値を生んでいく源泉だと思います。
自ら課題提起し、影響力を発揮できるかどうかは、日頃から信頼関係を構築し、組織や人の状態について良く聴き、観察し、HRとしての見立てをオープンに伝えられるかにかかっています。
真田:どのようなアクションをとられたのでしょうか。
平塚:いかに限られているリソースをうまく投じるかを考えます。
HRには、本当にやることが多くありますので、全てを網羅しようとすると、当然ながら、付加価値の高いところに費やすリソースが、相対的に小さくなってしまいます。
このようなリソース配分も、グローバル企業ではよく議題になります。
例えば、トリンプでも、数年前にグローバル全体で採用プロセスの一部をアウトソースしました。
HRビジネスパートナーの業務分析の結果、どこの国でも相当な時間を採用オペレーションに使っていることが判ったことが背景にあります。採用に限らず、オペレーションの複雑性をできるだけ排除し、限られたリソースを優先事項に集中させていかないと付加価値を生むことができなくなります。
アウトソースに踏み切った理由もそこにありました。採用プロセスは社内で完結するのが日本ではまだ一般的ですし、トリンプでも定着するまで時間を要しました。
試行錯誤は色々ありましたが、HRがより付加価値の高い事にリソースを使うという目的は達成できたと思います。
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