筑波大学大学院 人間総合科学研究科 相川 充教授と弊社代表真田が、相川教授著書『人づきあい、なぜ7つの秘訣?』についてお話をお伺いいたしました。

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筑波大学大学院 人間総合科学研究科 相川 充教授と弊社代表真田が、相川教授著書『人づきあい、なぜ7つの秘訣?』についてお話をお伺いいたしました。

筑波大学大学院 人間総合科学研究科 相川 充教授と弊社代表真田が、
相川教授著書『人づきあい、なぜ7つの秘訣?』
についてお話をお伺いいたしました。

対談者様情報

相川 充(あいかわ あつし)氏

筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授

広島大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。 宮崎大学助教授、東京学芸大学教授を経て、現職に至る。博士(心理学)。著書に「コミュニケーションと対人関係」「新版 人づきあいの技術」など。

※部署・役職はインタビュー当時のものです

筑波大学大学院 人間総合科学研究科 相川 充教授と弊社代表真田が、相川教授著書『人づきあい、なぜ7つの秘訣?』についてお話をお伺いいたしました。

真田:今までにたくさん本をお書きになられていますが、『人づきあい、なぜ7つの秘訣?』この本を書かれた動機やきっかけをお聞かせください。

相川:知り合いの出版社の方からお話を頂き、私は心理学者なのでこのようなタイトルの本はどうか?ということになりました。

個人的な動機としては、年齢的なこともあるので一般向けの本としてはこれを最後の本にしようというつもりで書きました。

真田:特にこの本の中で欠かせない大事な事は、どの辺の内容になりますでしょうか?

相川:どういう理由でこの本を読むかということによっても違ってきますが、全般的に「人間関係をとにかく上手くやりたいです」という人や、「人間関係を新たに始める」、「人間関係を上手に維持していきたい」、という方、どちらにしても「人の話をまず聞く」という事がとても大事な事と思っています。

『人づきあい、なぜ7つの秘訣?』という本のタイトルですが、私としてはその7つのうちでどれが一番重要?という風に聞かれれば、どんな立場の人でも「聞く」ということになると思います。

上司であろうと部下であろうと、どんな立場の人であろうと、「聞く」ということがとても大事な事だと思ってます。

真田:なるほど。先に聞いたほうがよかったのですが、7つという風にされたのは、それは何か深い意図があるのでしょうか?

相川:こういう啓蒙書だからあまり分厚くはできませんが、ある程度私としては書きたいという事もあり、7つ程にしてみましょうと。

でも、実はなぜ7つなのかっていうのが本のタイトルになってるので、むしろ読んだ方になぜ7つなんだろうとその理由を考えてもらいたい事もありつけてみました。

本音を言うと、10入れたいが少し多過ぎという事もあり、それで7ぐらいになったんです。

真田:大事なものを絞り、7つにしたという事ですね。1つ目が挨拶っていうのが、専門書ではないとはいえ、意外な印象を受ける方が多いと思います。

相川:昔、ある大手の出版社から原稿を頼まれて、その1つの大きなテーマが挨拶の心理学について書いてほしいと言われ、挨拶だけで1冊ぐらいの原稿を書きました。

しかしながら、締切りの1年遅れで出したら編集者からもう遅いと断られてしまい、私はその1冊分の原稿を無駄にしたくないという思いと、それを書くのに私なりにいろいろ心理学の立場から挨拶についていろいろ考えましたので、これは最後の本だし集大成だから入れさせて頂きました。

やはり人間関係とか人付き合いって考えた時に、挨拶から始まりますし、特に日本はそれを大事にする国なので、そういう意味では1番目に置いてもいいのかなと思いました。

真田:なるほど。挨拶は、日本と他の国では随分とその心理学的な意味合いが違うんでしょうか?

相川:はい、随分違いますね。主にアメリカとかイギリスとか欧米、英語圏との比較になりますが、日本の場合は形式をとても大事にします。ところが、特にアメリカではその形はむしろ崩そうとか、そんなのはいいよという感じで、いきなりハイ(Hi)とか、形式的な挨拶はむしろ省きたい、省く間柄だよねということ自体をお互いに確認し合ってビジネスを進めるところがあります。とはいってもアメリカのビジネスマンもチャットをする時は挨拶からはじめますし、握手もします。だから挨拶抜きではないのですが、日本の場合はその挨拶に形式があります。それを重んじる事によって、人間関係がスムーズに進むことがあると思います。

最近ではインターネットの普及により、ネット上でのコミュニケーションが多くなっています。そうするとパソコンの向こう側、スマートホンの向こう側に人がいるんですけども、でも直接はスマートホンだったり、文字だけで何か送っていたりということなので、どうしても自分の見てるところでコミュニケーションが成り立っているという風に誤解をしてしまいます。だから、何か問題があった人とぶつかった時には、いや自分はこうなんだっていう自分のことで物事を見てしまうことが多いと思います。

真田:そういう意味で言いうと、ソーシャルスキルそのものがインターネットとかSNSの普及によって大きく影響を受けていますね。

相川:「生の接触」というのが昔は嫌でもありましたが、今では接触をしないで済んでしまいますので、そういう状態になっていくんですね。

学校現場ではパソコンが導入され、教科書は電子化になり、そうすると子どもたちが学校に行く必要が無くなってきていて、何のために学校に行くのかという理由が無くなりつつあります。

昔はみんな集まって先生から知識を得る。集団でのやり取りとか友達とのやり取りとか、先生からいろいろ人間関係について教わったりする。

専門用語では「モデリング」と言い見て学んでいた訳ですが、今では学校は知識を伝えるだけだったらパソコンだけで済んでしまいます。そもそも教科書が電子化されてしまえば、一人ひとりに応じた教育も可能になるので、一人ひとりの方がそれぞれに応じた教育ができ先生はみんなの前に立つ必要もなくなります。実際、日本の義務教育そちら方向に動きつつあります。ですから、日本の学校教育もどんどん電子化になり、もしかしたら学校に集まらなくてもよくなるかもしれません。

学校のもう1つの大きな重要性は、生の人間がそこにいるということです。いじめる子でもいいんです。いじめる子が毎日いて嫌だなと思ったり、嫌な先生もいたり良い先生もいる。そういうのを生で体験する場として、学校の機能というのはむしろそちらに今ウエイトが高くなってきています。知識だけを伝えることは本当にインターネットで済んでしまいます。

真田:学校だけじゃなくて企業も今、リモートワークを取り入れそちらの方向に色んなことが進んでます。では、ほんとにそれで仕事が上手くいくのかと言うと上手くいく部分もありますが、やはり疑問もありますね。顔を合わせないとできないことがあるのではないかな?と個人的に思います。ソーシャルスキル的にはどうなんでしょうか?

相川:それは仕事として何を目標にどんな成果を上げたいのかという事によって違ってきます。その種類によっては確かに良いところもあると思いますね。ただ、チームとして何か動かないといけないという事があれば、やはりどこかで生の体験をするとか1対1で話すとか、それは絶対に欠かせないと思っています。人間っていうのは社会的動物ですから。

真田:そうですよね。仕事を全部きれいに分割して振っていくとなると、社員である必要もそもそもなくて、全部外注でもいいと思うんですよ。でも、全てが外注でやるというプロジェクトという仕事のやり方もありますけども、やっぱり組織企業が全部それで賄えるかって言うとやはり新しい知恵を生んでいくとか、共同作業的なものはどうしても必要だと思うんですよね。まさに対面でのソーシャルスキルが必要だと個人的には思います。

相川:私も基本的にはそうあってほしいし、そういう部分が実際にあるし、1人では思いつかなかったアイデアも誰かと話をしているうちに思いつくこともあります。ただそのアイデアを思いつくっていうことだけを目標にするのであれば、むしろ1人でぼんやりしてふと思いつくアイデアのほうがいいのかもしれない。だから、どちらも必要だとは思うんです。

基本的には人間関係も大事だし、そこからが全ての出発点だっていうことを言いたいのですが、でも現状はそうでもない方向に進んでいます。実際、1人でもいいんだという立場の人のことを聞くと、まあ確かにそれもあるなとも思います。人間関係のことに疲れないとか、こういう本を読みたい人はある意味減ってるかもしれないと思います。

つまり、そうやって1人で何とかしてしまうとか、パソコンとかインターネットがあれば仕事ができるっていう世の中になってきました。

人間関係の直接ぶつかり合いを避けて一生を終える人も出てくるんじゃないかなと。一生って言うと大げさですが、特にビジネスっていう現場に限定すれば、場合によっては対面しなくてもいいという場面が増えてきているようなきがします。

真田:そうですかね。何かさみしいですね。

5章の「自分の思いを伝える」というお話なんですが。これは今の日本人に特に重要で、日本人が元々あまり上手ではない事ですよね。これはやっぱりスキルとして身につけていく必要があるのでしょうか?



相川:ありますね。特にこういう時代だからこそ伝える必要があります。それがいかに伝えるか。あまり日本人っていうのは、強く出し過ぎるとこちらの思いが伝わる前に拒否されますし、そういうところがあるから余計に伝え方というのはとても大事だと思います。

場合によっては想いを伝えたために人間関係がギクシャクするとか悪くなるっていうこともあるかもしれませんが、長い目で見れば結局は自分の思いを伝えれたほうがいろんな関係は良くなると思ってます。

真田:そうですね。次の6章には、「柔らかく自分を守る」というのがありますが、これは逆に、一部の主張しすぎる人、モンスター的な人がいて、その対処で苦しんでるケースもあるという事ですね。

相川:それを想定してそこは書いています。ほんとうに今ビジネスマンの人と話すと、クレームとか…そのクレームは例えば上司の立場で言うと部下から言われて、それに上手く対応したつもりなのに今度はハラスメントと言われちゃうとかですね。そこにも書きましたが、今一番皆さんに勧めてるのは、セルフコンパッションという割と新しい概念なんです。それをお勧めしています。最近メンタル的に落ち込んでしまった人がいて。その人から個人的な相談を受けたんですけど、その人に毎晩寝る前に3つでいいから今日の出来事をできるだけ良かったこと、些細な事で本当に良いので3つぐらい思い浮かべて、その時の自分を褒めてあげてくださいってエクササイズを勧めたんですね。その人はすぐに反応を起こし、自分がいかに自分を否定的にいつも思ってたか、まず自分でびっくりしたって言ってました。

真田:そうなんですね。ビジネスパーソンには、この本をどんな風に読んでほしいか、どんな風に活用してほしいかっていうことをお伺いしたいんですけど。

相川:とりあえず人付き合いに悩んでいて何とかならないのかなと思った人に手に取っていただきたい。それがまず第一歩で。そのあとは、自分はどういう人間関係で悩んでるんだろうかっていうことを考えながら、何かこの中で役立つものないかなっていう感じで、自分の問題に引きつけつつ読んでいただければ、ヒントが出てくるではないかと思います。だからそういう意味で考えながら読んでほしい。考えながらと言っても深く何か物事を考えるというよりも、何か与えられたものをとりあえず自分と自分の問題とこの本に書いてあることに結び付け考えてほしと思います。

それでわざわざタイトルには、「?」クエスチョンマークをつけてみました。

人間って、こうしなさいって言うと動きますが、どうしたらいいと思う?って聞かれると自分で考えて動きますよね。

コーチングの基本なんですけども。そういうコーチングの基本の疑問を投げかけることによって、相手が考えながら自主的に動いてくれる。それを狙っていく必要もあるなと思ってつけました。



真田:ありがとうございます。最後に、先生の研究テーマの1つでもあるポジティブ心理学はどういう位置づけで関わっていらっしゃるんでしょうか?

相川:ポジティブ心理学は、その本の中にも書いたかもしれませんが、「21世紀の心理学」というキャッチフレーズで登場してます。それは実際に21世紀になる時にアメリカの心理学会の会長になった方が、その人が今までの心理学というのは人間のネガティブなことをやっていた、と。それは21世紀の心理学で、これからはそれも必要だけれども実は人間って非常にポジティブな面があり、これからはポジティブな思考、人間が持っているポジティブな側面を心理学の研究テーマにしようと世界の研究者に訴えたわけです。

特に、日本人は謝罪の気持ちと負債の気持ちと感謝の気持ちを同時使いますが、これはめずらしい事で、例えば人に何かしてもらって「すいません」って言うのは、韓国でもほとんど言わないですが、わからなくはないと韓国の人は言います。中国でもありませんし、英語だったら何かしてもらった時にThank you.って言う感じでいいんですよ。I’m sorry.って言っても通じないわけですよ。

言われたほうは、「えっ!?」と思うわけですから。ところが日本人っていうのは、「すいません、すいません」と感謝を言ってるわけですね。この点は非常に面白いですね。

感謝と謝罪が同時に起こるっていうのは、日本人の心の特徴として国際学会なんかで発表したら結構ウケがいいんですよ。

ある意味では、韓国のほうがもっと日本の昔の心情を残してる部分があるかもしれません。縦の関係、縦社会の関係が割と儒教のところとか、お年寄りをすごく尊重するとか。

真田:儒教の影響がやっぱりその「すいません」の背景にもあるんでしょうか?

相川:その辺は文化人類学がどうなってるかよくわかりませんが、地理的に見ると日本の思想というのは、結局全部外から入ってきていますから。

中国かあるいはインド、仏教なんかはインドから経て中国に渡って韓国から日本へ入ってきていますし、漢字だってそうですね。元々は中国語ですから。

ですから、ルートを考えると日本って端っこでその先に行かないんですよね。そこで溜まってるんですよね、地理的に。だから、ある意味では古典的なものが残るような感じがします。

中国の方が観光で日本に来て、奈良や京都を回ると、昔の中国が残ってると聞きますけど、そりゃそうなんでしょうね、平安京とか平城京みたいなのは全部元々中国の真似をして作ったわけですから。それが奈良や京都だとか言ってるだけなので。

真田:それこそ、論語とかも日本に中国人が学びに来るという。(笑)

相川:そうなんです。日本はいろんなものが溜まるんですね。その先が太平洋しかないですから。思想とかいろんな思いのエッセンスがここに溜まり、日本人は非常に国民性、思想、技術にしてもそれを極めたがりますね。技術的な面もそうです。

極めて極めて、というのが日本人の特質ですから、思想的にもどうしてもそうなって。感謝と謝罪脳っていうのはほんとに論語あたりにいくのかもしれません。

真田:すごく面白いお話をお伺いできたんですけど、この本はまさに先生の集大成ということでいろんな要素が入っていますが、まずこれを読んでもっと詳しく知りたい、例えばその感謝についてもっと知りたい場合は何を読んだらいいんでしょうか?

相川:注釈に書いてあるんですけども、詳しくどのレベルかにもよりますけれども、専門的、アカデミックなレベルでしたらいろんな論文が出てます。今でしたらインターネットですぐに検索できますから、アカデミックなレベルでしたらそういうのもいいと思います。

科学研究費を頂き他のチーム組んでやっている研究や、チームメンバーの研究とかも検索でヒットしてきます。

その中の1つで、私のところで学んでいる博士課程の学生が「感謝スキル」というのを特に研究しています。感謝もやはりスキルということで。

真田:面白いですね。感謝もスキルですか、あんまり考えたことないです。

相川:「ありがとう」の言い方や示し方を技術論で。ただほんとうに感謝の研究とか人付き合いの研究は、研究者としてジレンマになるんですね。研究レベルでは全然やられてないから研究テーマとしては面白くてアカデミックな世界では評価されるんです。一生懸命研究もしますしデータも取りますし、難しい統計学を使って分析もします。しかしながら出てきた結果っていうのはビジネスの現場にいる人だったら、「それは知ってますよ」となります。

テーマが感謝だとかこのようなテーマであればあるほど、そこがジレンマなんです。

だから感謝の本なんかは私の立場から出せないんです。というか、出版社が「そんなの、出せません」となります。

それだったらむしろビジネスの現場で大成功している人が、「実は感謝の気持ちを大切にしていたからこそ成功しました。」というのストーリは説得力がありますよね。昔からそういう本はたくさんあって、そういう本の方が出版としてはいいんですよ。

そういうアカデミックな世界でこうだああだとか、数式で書くとか言ってみてもね、最終的に出てきた結論は、常識をひっくり返すことになかなかならないので。

それが対人心理学の悲しい宿命です。皆さんは上だと思ったけど実は下なんですよというのが出てこないんです。皆さんが言ってた通り上でしたとか。ただ、出せるのはどうしてかっていう理由ですね。これはこういう理由でこうなって、とか。その説明ができるということですね。これは心理学、特に対人心理学の悲しい宿命です。

私たちのような人間関係を扱う心理学ですと、こうだ!って言ってもいやそれは、日本人はそうだけどアメリカ人違うとか、黒人には通じないよ、ラテンアメリカの人は違うよとか、すぐそういう世界になるんですよね。それで一生懸命こうなんだよってやっても、ほーらやっぱりそうだったって結局当たり前のことだったのねとか、体験的に知ってたよねってことしか出てこない。これはほんとにもう長年心理学者をしていて感じるむなしいところです。

真田:ほんとうに難しいですね。本日は、『人づきあい、なぜ7つの秘訣?』この本を書かれた動機から内容、背景など色々なお話を聞く事ができました。ありがとうございます。



相川:このような機会を設けていただいて、ほんとにありがたいです。

真田:こちらこそ本日は、本当にありがとうございました。

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