
入社3年以内の社員に効果的なキャリアワーク3選
1.はじめに:なぜ「キャリアの土台づくり」が重要なのか
入社3年以内の若手社員にとって、この時期は“働くこと”や“自分の将来像”に向き合う土台をつくる大切なフェーズです。
配属直後は仕事を覚えることに必死だった新入社員も、半年~2年目あたりから徐々に「このままでいいのか」「自分は何をやりたいのか」といったキャリアの悩みを抱えるようになります。
実際、厚生労働省の調査でも、離職が最も多いのは「1〜3年目」のタイミングであり、その背景には“将来が描けない不安”があるケースが少なくありません。
こうした中で、人事・育成担当者ができることは「キャリアについて自分で考えるきっかけ」を意図的に設計すること。
今回は、入社3年目までの若手社員に特に効果的な3つのキャリアワークをご紹介します。
いずれも特別な知識がなくても導入でき、研修やOJTフォローの中でも活用しやすい内容です。
2.「価値観の棚卸し」ワーク:自分の軸を言語化する
■概要
自分の“キャリア観”を考えるうえで、最初の一歩となるのが「価値観の可視化」です。
仕事観・人生観・働き方の好みなどは人によって異なりますが、それを言語化する機会は意外と少ないものです。
■実施例
- 30~50の価値観キーワードカード(例:成長、安定、挑戦、貢献、報酬など)を配布し、「自分にとって大切な価値観ベスト5」を選んでもらう
- なぜそれを選んだのかをシートに記入し、グループで共有・対話する
- 最後に「これからのキャリアで、何を大切にしていきたいか」を文章で整理する
■期待できる効果
- 自分にとっての“働く意味”や“モチベーションの源泉”が明確になる
- 他者との価値観の違いに触れ、多様な働き方やキャリア観を理解する
■活用ポイント
このワークは、研修単体で行うよりも「定期的な1on1」や「キャリア面談」と組み合わせると効果的です。
一度言語化しても、現場経験によって価値観が変わることは当然あるため、“定点観測”的に取り入れることをおすすめします。
3.「ロールモデル探索」ワーク:キャリアのヒントを外に求める
■概要
自分のキャリアを考えるには、「他人のキャリアを知ること」が大きなヒントになります。
特に社会経験の浅い若手にとっては、「自分が知らない選択肢」に触れること自体が視野を広げる機会になります。
■実施例
- 事前課題として、「社内で尊敬している先輩社員」を1人選び、1時間程度インタビューを行う(質問項目テンプレートを事前に配布)
- インタビュー内容をレポートにまとめ、研修や発表会で共有する
- 「その人から学んだこと」「自分にとってのヒントは何か」を振り返る
■期待できる効果
- 「目指す姿」のイメージが具体化され、日々の業務への意味づけが強まる
- キャリアは一本道でなく、“人によって異なる”ことを体感できる
- インタビューによって縦のつながりやメンター的関係性が生まれる
■活用ポイント
インタビュー相手は、必ずしも“理想の姿”である必要はありません。
「悩みながら進んでいる人」「自分と価値観が異なる人」など、多様な視点に触れる方が若手にとっての気づきは深まります。
また、事後の共有フェーズでは、「その人のまねをする」ではなく、「何を自分に取り入れるか」の内省が重要です。
4.「3年後キャリアシナリオ」ワーク:中期的視点で今を意味づける
■概要
若手社員は日々の業務に追われやすく、「今やっていることが将来にどうつながるのか」が見えづらくなりがちです。
そんな時に有効なのが、“未来から今を見直す”というアプローチです。
■実施例
- 3年後の理想の状態を自由に描いてもらう(職種、スキル、関わっている業務、社内外での立場など)
- その実現に向けて「来年までにやっておきたいこと」「今の仕事で伸ばすべきこと」を具体化する
- グループで発表し合い、他者の目線でフィードバックをもらう
■期待できる効果
- 「目の前の業務」の意味づけが明確になり、学習意欲が高まる
- 言語化することで“ぼんやりした将来像”が具体的な行動に変わる
- 周囲の期待と自己イメージのすり合わせが進む
■活用ポイント
このワークは、評価制度やキャリア支援制度と連動させることで、さらに効果を発揮します。
たとえば、「シナリオに記載された内容の一部を、次回の業務アサインに反映する」といった工夫があれば、ワークの一過性を防ぎ、リアルな動機づけにつながります。
5.おわりに:キャリアは“対話”で育つ
キャリアの正解は一つではなく、若手社員にとっても“模索のプロセス”が成長の一部です。
その模索を一人で抱えさせるのではなく、「ことばにする機会」「誰かと対話する場」「自分の選択肢を増やすきっかけ」を丁寧に設計することが、育成担当者の重要な役割です。
今回ご紹介した3つのキャリアワークは、どれも特別な研修スキルがなくても実施可能なものです。
必要なのは、「キャリアを“考える習慣”を持たせることが、将来の自律や定着に直結する」という視点です。
今、若手社員は“キャリアを自分で考えること”が求められています。しかしそのためには、考える「場」や「問い」や「きっかけ」が必要です。
育成設計の一環として、ぜひキャリア支援の要素を取り入れてみてください。

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