サーバントリーダーシップ~サウスウェスト航空の事例~

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サーバントリーダーシップ~サウスウェスト航空の事例~

サウスウェスト航空の事例



サウスウェスト航空は、航空業界においてめざましい業績を上げ続けている事で有名です。
この34 年間、一貫して利益を上げ続けており、フォーチュン誌の「アメリカで最も働きがいのある企業ベスト100」の1位や2位にランクインする事でも知られています。
2006 年度の純利益は4 億9900 万ドル、顧客数9640 万人、従業員は32,000 人強でした。
また、5 年連続で三冠王(定時運行が最多、荷物紛失が最少、顧客の苦情が最少)を取った唯一の航空会社でもあります。


「並外れたサービス」や業界で一番の利益性で有名であり、従業員からはアメリカで最も働きがいのある企業の一つに選ばれた、この伝説的な企業の秘密-DNA-はいったい何でしょうか?
多くの人は企業文化のお蔭だと答えるでしょう。サウスウェスト航空はその企業文化を次のように定義しています。

・ サーバントの心で導く
・ そして、楽しもうという姿勢!
・ 戦士の精神

ハーブ・ケレハー取締役会長とコリーン・バレット社長は二人共、この企業文化を促進する重要な役割を担っていました。
これらの文化は32,000 人の従業員と共に、この2人のリーダーが実践するレベルを越えなければなりませんが、皆、それは可能だと信じています。
実際、たった一つのカルチャー・コミッティーから、数え切れないほどの貢献者が生み出されているのです。

カルチャー・コミッティーの女王

コリーン・バレットは「会社の母」としばしば呼ばれますが、彼女を理解しなければカルチャー・コミッティーを真に理解する事はできません。
コリーンは32,000 人のサウスウェスト航空の従業員の心を勇気づけるために、ビジョンを掲げ、あらゆる階層の従業員が一つの家族になれるように促し、サーバントリーダーシップのお手本を見せ、たくさんの謝意を示しました。

コリーンはいつも何をすべきかを考え、自分の責任として引き受けるのです。
サウスウェスト航空が経済的に生き延びるために必死になっていた初期の頃、コリーンは人の将来像を提言し、ハーブは彼女に人材部門と顧客に対する責務を与えました。
彼女はその両方に対し、素晴らしいビジョン、変革、サーバントリーダーシップで貢献したのです。
顧客部門の副部長になっていたコリーンは、会社が倍に大きくなるにつれ、カルチャー・コミッティーを作りました。
最初は、全ての階層と部門からサウスウェスト精神を体現するために選ばれた約38 名のオピニオンリーダーで構成されました。
今日、カルチャー・コミッティーは120 名の熱心な従業員-サウスウェスト精神の血と鼓動-からなる活発なチームで成り立っています。

サウスウェスト航空で特筆すべきなのは、リーダーのうち女性が約40%でマイノリティが約30%であるということです。
コリーンがカルチャー・コミッティーに取り入れた特質には次のようなものがあります。
ここで留意すべきは、これらの特質はサーバントリーダーシップの特徴でもあるということです。

サウスウェスト航空の企業文化の特質

サーバントの心で導く

コリーンはいつでも私心のない奉仕の精神の手本となるように努力し、強力な奉仕の文化を育てる事に情熱を注ぎました。彼女は愛情深い精神で皆を勇気付け、事業所や部門の従業員に配慮しています。


他の人に望む事を自分でやってみる

コリーンは「あなたがして欲しいことを他の人にもしてあげなさい」という行動規範を挙げています。
従業員が「並外れた顧客サービス」というものを実現するには、彼ら自身がリーダーや同僚達からも愛情深い精神と惜しみない支援を受けなければならない事を、ハーブとコリーンは初めから知っていたのです。


顧客は二番目

この規範は当初から、サウスウェスト航空の独自性にとって重要な部分を占めるものです。
従業員は自分達が受ける支援に満足している場合に限り、顧客に対して印象的なサービスを提供できるという事を、ハーブとコリーンはよく理解していました。
彼らは、顧客が常に正しいわけではないと考えていました。
コリーンはこれが行動規範に当てはまると考えています。
失敗を犯して顧客に頭を下げる時でも支援をしてもらえる事を従業員が知っていれば、彼らは問題を解決するために現場で創造的な意思決定をして顧客をもっと喜ばせるようになるでしょう。

代表例:
ある搭乗口係の話です。飛行機に搭乗する際にタラップで滑って足の骨を折った顧客がいました。
もう既に夜遅く、その搭乗口係は、顧客を緊急医療機関に搬送するために自家用機を借りたのです。
この従業員は、すばらしい顧客サービスをしたとリーダー達に高く評価されました!

もう一つの事例は、ワシントン州ボルティモアで試雇期間中の顧客サービス係の話です。
ボルティモア・ワシントン国際空港からニューヨーク州ロングアイランドへの夜遅いフライトが天候によりキャンセルされたとき、その係は顧客をその夜のうちに安全に目的地へ着くように3台のバスを手配したのです。
もちろん、彼女はリーダー達に賞賛されました。

これらの事例は、従業員は正しい事を行うとリーダーが信頼を寄せている事と、従業員が実践する職権を与えられている事を表しています。
これこそ、サーバントリーダーシップを実践している証なのです。


純粋な傾聴

マーケティング部門の副事業部長を引退したジョイス・ロッジに対して、コリーンとカルチャー・コミッティーがなぜこんなに成功しているのかを尋ねました。
すると、コリーンには純粋に熱心な傾聴ができる特別な才能があるのだと教えてくれました。
カルチャー・コミッティーの各ミーティングではメンバーの話を聞く事がほとんどの時間です。
「今年はどの問題に取り組むべきか?」は最初の議題となります。全米63 地域と航空会社全部門の代表者と共に、コリーンはビジネスの方向性を迅速に探る事ができます。
トップリーダーは常にミーティングに参加するので、次への挑戦をその場で確認し、即座に積極的に取り掛かるためには非常に効果的な方法なのです。


追求する。学んだ事に従って行動していると信じる

ジョイス・ロッジは、自分のメンターであるコリーンについてもう一つの見解を教えてくれました。
コリーンは行動が首尾一貫している事によって、大きな信頼を得ているというのです。
小さなアイデアにしか見えない事であっても、彼女は驚くほどに惜しみ無く支援をします。
それと同時に、複雑な問題の本質にたどり着くために、彼女は粘り強く耳を傾ける事ができます。
従業員満足度調査が徹底的に行われたことがありました。
コリーンはリーダーシップチームの支援の下、個々の課題について説明と報告をするために組織横断的チームを編成しました。
調査の結果は毎月発行の社内報「LUV LINESに掲載され、主な課題に対してコリーンが細かく説明をしています。
それによって、多くの従業員は正直な意見を伝える方が良いと信頼するようになり、改善策が実行されているかどうかを全員が知る事ができるのです。
従業員調査について説明する時、コリーンは正直に100%オープンにしたほうが良いと認識してもらうように努力しています。
これはサウスウェストの文化とリーダーシップのもう一つの信条なのです。

2007 年のバレンタインデーにサウスウェスト航空では、16 回目の「心のヒーロー」を記念するお祝いをしました。
これは、カルチャー・コミッティーの改革の一つで、舞台裏で頑張っている縁の下の力持ちがサプライズで心のヒーローとして栄誉を与えられる毎年のイベントです。

この年、7 名の女性からなる内部顧客サポート部門が選ばれました。
彼女達は、32,000 人の従業員が参加する様々なイベントで、栄誉を与えたり、評価したりする側の活動をしています。
顧客サポート部門の名前は栄誉として、特別なサウスウェストの機体に1 年間記載されていました。
この年、ハーブ・ケレハーは、コリーンに心のヒロインと名づけられた賛辞を贈るというサプライズを行い、1 年間の栄誉として、サウスウェストの機体に彼女の特別なマークを描いたのです。
その賛辞には、次のように書いてあります。

サウスウェスト航空の規模が倍増に倍増を重ねていく中、多くの懐疑論者はサウスウェスト航空のとても温かく、寛大で、人に寄り添った文化が続いていくのかどうか疑っていました。
しかしコリーンとハーブは、全ての挑戦を新しい創造的な改善策に変えるように、皆とチームを編成しました。
カルチャー・コミッティーが始まってそれほど長く経たないうちに、メンバーがこのアイデアを各地に広め、同じコンセプトに立脚した63 のローカルなカルチャー・コミッティーが始まりました。
そのため、現在では、楽しく働き、問題を発見して解決し、協力を求め、支援を申し出るのを維持するためのチームがネットワークされ、サウスウェスト航空を際立たせる精神を維持しているのです。

サーバントリーダーシップの目的は、皆を成長させたり、働きかけたりして導くことです。
コリーン・バレットは32,000 人の従業員からなる会社を動機付け、9640 万人の顧客を幸せにするために膨大な任務を抱えています。
一体どうやってそれを実行しているのでしょうか?彼女は、皆が戦士の精神になり、サーバントの心で導き、これら全てを楽しもうとする姿勢で取り組むために、育成し、元気付け、支援しているのです。
それこそが、サーバントリーダーシップを実行する事に他なりません。そしてそれこそが、サウスウェストの精神なのです。


書籍『Being the Change(NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会)』
著者:アン・マギー=クーパー、ゲイリー・ルーパー、デュエイン・トランメル
(株式会社レアリゼ 訳)より抜粋

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