OSTとは?

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OSTとは?

OSTとは? 


OSTとは、ワールド・カフェと同様、全員参加型の大規模な対話手法であるホールシステム・アプローチの一つです。
1985年に米国でハリソンオーエン氏に より開発されて以来、多くの国で広く活用されています。
OSTとは、「実行したいアイデア」「解決したい課題」「探求したいテーマ」を参加者が提案し、それに賛同する人が集まって話し合うことにより、具体的なプロジェクトを生み出したり、テーマについての理解を深めたりするためのワーク ショップ手法です。

参加人数ですが、経験上は5人から開催できます。参加者の規模に制限がなく、大規模なものでは、2000人以上が参加したものがあります。
私はこれ までファシリテーター養成講座で、公開講座だけで、約300人のOSTファシリテーターを養成しました。

OSTのプロセスによってつくられる〈場〉には、次のような特徴があります。

●参加者の自発性が尊重される
●思いや情熱を伝え、仲間を募ることができる
●最も貢献できるテーマに移動できる
●ダイアログによって、個々の違いを超えた深い合意に導く
●参加者が十分に貢献できる環境を大切にする
●主体的な行動を喚起するグラウンド・ルールを共有する

1.OSTの全体的な特徴と流れ

OSTは、以下のような流れで行われます。

STEP1

オープニング

参加者はサークルの形になって座り、ファシリテーターがOSTの目的とプロセス、グラウンド・ルールを説明します。

STEP2

検討テーマの提案

ファシリテーターが、検討したいテーマのある人は提案してほしいと呼びかけます。呼びかけに応じて、検討したいテーマのある人がサークルの中央に進み出 て、テーマを紙に書いて読み上げます。その後、次々と提案が出されて、提案されたテーマは壁に張り出されます

STEP3

マーケット・プレイス

提案者以外の 参加者がどのテーマに参加するかを選び、グループをつくります。

STEP4

分科会

グループごとにそれぞれの 部屋や決められた場所に分かれて、自主的に分科会の話し合いを運営します。

STEP5

クロージング

OSTの最後に、始まったときと同じようにサークルになって座り、感想を述べ合います。



2.OSTのグランドルール

私オープニングに際してファシリテーターは「 4 つの原則」と「移動性の法則」について説明しますが、O S Tに参加する際のグラウンド・ルールとでも言うべきものです。

4つの原則とは、以下の4項目です。

● ここにやってきた人は誰もが適任者である。
● 何が起ころうと、それが、起こりうるべき唯一のことである
● いつ始まろうと、始まった時が適切な時なのである。
● いつ終わろうと、終わった時が終わりの時なのである。

次に「移動性の法則」ですが、どのように時間を使うかはあなたの責任であり、分科会の中で貢献できていなかったり学習 できていないなら、自分が学んだり貢献できるところに移動すべきであるという参加者の振る舞い方を示しています。
そして、この法則に従うと、参加した分科会が期待はずれだったら別の分科会に移動する「蜂」や、そもそもどの分科会にも参加しない「蝶」としての振る舞いも奨励されるのです。

3.OSTの企画

「そもそも何のためにOSTを開催するのか」という目的を明らかにすることから始めます。それは「共働き夫婦のワークライフバランスを考える」かもしれませんし、「新製品の開発」「間接部門の生産性を上げる」「事故を減らす」「顧客サービスの向上」「被災地の二次災害を減らす」「サッカーの試合の入場者数を増やす」「外国人観光客を増やす」かもしれません。

さまざまな立場や利害関係者が一堂に会して話し合うことで何か新しい取り組みが始まり、新鮮なアイデアが生まれる可能性のある目的を設定すると良いでしょう。
OSTでは、参加者が自主的に話し合いたいテーマを提案するようになっていますが、目的が曖昧だと誰に参加を呼びかけるかが定まりませんし、参加者もどんなテーマを出してよいか、わかりづらくなります。ですから、OSTを企画するにあたって、目的を明確化することはとても大切なのです。

また、開催の当日には、OST開催の目的を参加者が十分に理解していて、テーマについて話し合うことに強い情熱と責任感を持ってのぞめるように配慮しておくことが大切です。

次に、あなたが外部のファシリテーターであれば、主催者やスポンサーなどとの意識合わせも欠かせません。これはOSTの開催目的とも関係してきますが、主催者側がどんな成果をOSTに期待しているのかを確認しておきましょう。


ワールド・カフェとの組み合わせが効果的

ワールド・カフェでは、多様な視点を取り入れた話し合いが行われることにより、テーマに対する理解を深めることができます。
しかし、ワールド・カフェは結論を出すための話し合いの手法ではないので、話し合いの結果が直接的にアクションに結びつきにくいと言われています。

これに対して、 O S Tでは、参加者の内発的な動機から提案したテーマについて話し合いが行われるので、検討が深まり、具体的なプロジェクトや行動に結びつきやすいというメリットがあります。

従って、ワールド・カフェでテーマに関する理解を深め、具体的なアクションを導くためにO S Tを実施するという組み合わせがよく行われています。

出典:
『OST実践ガイド』(英治出版2018年)
『ホールシステムアプローチ』(日本経済新聞出版社2011年)
『ワールド・カフェから始まる地域コミュニティづくり』(学芸出版2017年)

大川 恒

HRT 代表

1961年生まれ.。早稲田大学第一文学部卒。シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。
現在、HRTでホールシステム・アプローチ(ワールド・カフェ、OST、AI、フューチャーサーチなど)のファシリテーター養成講座を開催している。
また、ホールシステム・アプローチを用いた『学習する組織』をつくる組織開発コンサルティングを行っている。地域コミュニティの構築支援および、その地域コミュニティを醸成する<越境型リーダー>を育成、支援する活動を展開中。著書に「ワールド・カフェをやろう!」「ホールシステム・アプローチ」(ともに日本経済新聞出版社刊)「俊敏な組織をつくる10のステップ」(ビジネス社)がある。
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